まぐろ大人の魚学肴学

トロ

まぐろと言えばトロ そんなトロのお話

実は、今でこそ高級品であり、美味と称賛されているまぐろのトロの部分、江戸から昭和のはじめ頃までは誰にも喜ばれない、下手すればそのままゴミ箱行きの部分だったなんて知ってました?
当時の呼ばれ方は「ネコまたぎ」。「ネコですら口にしない」という意味でしょう。今では考えられない扱いでした。では何故そんなゴミのような扱いを受けたのか?
早速調べ てみました。

その原因は・・・

当時の「輸送技術」にありました!!
当時の漁師さんは何時間もかけて手こぎか帆の舟で漁場を往復していたはずです。当然舟には水も冷蔵庫も無いまぐろ漁だったでしょう。いくら当時の名人と呼ばれた人でも、この漁法では鮮度が落ちるのは当り前です。いつの時代も「魚は鮮度が命」なのですから。そこで一つ疑問が残ります?何故他の魚は生でも食されていたとの記述が残っているのに、まぐろのトロだけは???

原因はまぐろの体質にあったのです。実は、このまぐろという魚は他の魚と比べると体温が高く(注1)、自分でそれを調整しなければ自分の体温で死んでしまう(体温でやけてしまう)というほどです。ですから常に体温を一定に維持する為に、マグロは水温15°Cの海域を求めて「呼吸」と「体外の海水の水温」で体温の上昇を抑え、延々と泳ぎ続けなければならないのです。 泳ぎ続けると言えばこのまぐろという生き物は、泳ぎ続けるための進化もとげているのです。もともとまぐろは他の魚たちとはエラの構造が違い、他の魚のようにエラを動かし酸素を補うという機能が無いため、常に口を開けエラに海水を通してそこから酸素を吸収しなければなりません。そして泳ぎ続けるためにはエネルギーを抑えることも重要になってきます。そのために、その状況に不必要な部分のヒレを収納する(旅客機が離陸するとタイヤを機内に収納して空気の抵抗を抑えるのと同じ)ための溝があり、水の抵抗を抑えローパワー・ハイパフォーマンスを得ているのです。更にまぐろは女性の理想とは真逆の「キュッ・ボン・キュ」のボディーラインで、極力抵抗を抑えることで時には時速80km/hとも言われる瞬間スピードと高速泳法で延々と大海原を泳ぎ続けているのです。

話がちょっとそれてしまいましたが、まとめれば、まぐろは体温が比較的高いので、水揚げしてからの処理が敏速でないとダメだヨォ~って話でした。

(注 1)通常魚の体温は水温より0.4度前後高いとされ、インドマグロ等は水温より4度程高いと言われています。