かに大人の魚学肴学

タラバガニ

正直このタラバが一番やっかいなのです。何故かと言うと。このタラバ…カニのようでカニじゃない。カニといってもカニじゃないベンベン。なのです。実はタラバはあの可愛いヤドカリの仲間に属する一種でカニとは本来区別されるらしいのです。だからカニと違って横にも縦にも移動できます。和名の由来はタラの場、タラが取れる場所という意味で甲殻類の和名には良く使われ、先程のズワイやベニズワイのように深海性のカニに使われることも多いようです。とは言ってもタラバはタラバ。カニの王様の代名詞。食べて美味しい・見て素晴らしい・もらって嬉しいの三拍子。英名も素晴らしくレッドキングクラブ(赤いカニの王様)です。そしてこの「タラバ」とよく比較対象とされるのが「アブラガニ」。こちらの英名はブルーキングクラブ。本タラバがレッドに対してアブラの方はブルー。何故そう言われるか説明すると、後者の「アブラ」は活きた状態でみると体表が本タラバは暗紫色がかっているのに対して若干青みがかってみえるのです。ついでに見分け方も説明しておくと…

見分け方)

(1) 甲羅上部を見ると「本タラバ」は甲羅の中心部H型の下に6つのトゲがあるのに対し、「アブラ」の方は同じ部分にこちらは4つのトゲがあります。

(2) 脚の部分を見ると一番判別しやすいのが、全体的な色のつき方です。「本タラバ」は脚の裏側にも色があるのに対し、「アブラ」にはほとんどなく、どちらかというと脚裏が白く見えます。茹でると更にはっきりします。

どちらが美味いの?)

「アブラ」というと、「本タラバ」に比べどうしてもマイナーなイメージが強いため、先入観から「アブラは脂が強くて食べられないのでは?」、もしくは「体に悪くないの?」という疑問をもつ人も多いはず。味的には「本タラバ」に引けをとりませんし、プロが食べて比べても分からないくらい両方とも美味しいものです。むき身の状態でしたら全然区別が付かないかもしれません。人によっては「アブラ」のほうが味的に好きと言う人も多いのです。ただどうしても「アブラ」は!!と言う方には当社でも「本たらば」をお勧めしています。なぜなら、先入観は味覚をも変えてしまうからです。もし機会があれば一度食べ比べしてみても面白いかもしれません。もうすでに冬商材です。個人の意見ですが「アブラ」のほうがお得なのかもしれません。懐にも!!

もしもう一度…)

確かにタラバは美味いし人気の食材です。茹でて好し・焼いて好し・揚げて好し・シャブして好し・生で好しと幅広く提案できる食材でもあるのです。そこで私の思い出のタラバ料理といえば…その「生」でいただいたお刺身です。ガラス皿に砕いた氷を敷き、その上に先程の生の鱈場の棒刺しと八角のお刺身。これを肴に熱燗で一杯いや三本。もみじに酢醤油、ほんの少しの本山葵。何とも言えないあの旨味は贅沢そのものでした。でもこの生のタラバの刺身を口にすることはなかなかできないのです。かなりの鮮度が要求されます。冷凍では確かに可能ですが、生とはやはり微妙な違いが出てきます。軽く湯引きしてみるその違いがわかります。繊維の関係で冷凍では華が咲かないのです。
ただ最新の冷凍技術http://www.abi-net.co.jp/では違いがわからないかもしれませんのでこのくらい・・・。