かに大人の魚学肴学

毛ガニ

常に、カニ料理の中で上位に位置づけているのがこの「毛ガニ」。なかなか食卓に並ぶと言うものではなく、どちらかというと外で食べるものという印象の方が多いのではないでしょうか。私も個人的には「毛ガニ」がカニの王道なのです。この「毛ガニ」、実は日本海沿岸からロシアまで、太平洋沿岸では茨城県以北からアラスカ沿岸まで広いエリアに生息、北の人間には特に馴染みの深いカニの一種だと思います。毛ガニは名前の通り全身が短い毛で覆われており、大きさは大きめと言われるサイズでも、甲羅の部分で大人のこぶし位の大きさです。

成 長)

毛ガニはおよそ1年でふ化し、脱皮を繰り返すことで体を大きくします。毛ガニは5年目までは毎年、5年目からは2年に1度のペースで脱皮を繰り返し、およそ15年活きると言われています。メスに関しては、3年に1度脱皮するのでメスの成長はオスよりも遅いことになりオスの方が大型になります。

産 卵)

毛ガニはそもそもオス・メス別々の深さ(オスはメスよりも水深の深いところに住んでいる。)で生活しているため、産卵時にオスがメスの住む場所に上ってきて(以外に草食系男子かも)メスにプロポーズをします。ただプロポーズといっても好みのメスの後ろから爪で押さえつける(今度は肉食系?格闘系?)という何とも強引な手法でメスの返事を数日間待つそうです。そしてその返事は…脱皮…。いささか寂しいような気もしますがそれが自然界。ただメスは交尾を生涯1度しかせず、体内に残した精子で産卵を繰り返します。メスは長い時間をかけて繁殖し自らも脱皮を繰り返すことで子孫を残しますが、他のカニよりも繁殖力が低いのため、乱獲等の影響を受けると漁獲量が回復するまでかなりの時間が有すると危惧されています。

選 別)

毛ガニを評価する際に、一番重要視するのはミソの入りです。そぅあのカニミソです。ただ1パイ1パイ腹部を開けるわけにはいかないので、全体的な色目と持った感じの重量感、あとは裏返しにして脚部の色の濃い目を選ぶといいと思います。((注)ただ冷凍の状態ですと、甲羅と身の隙間に入った水分(ドリップ)が凍結して重く感じることがありますので注意が必要です。)又、カニには水・若・半若・堅と脱皮を基準に呼び方があります。水ガニは脱皮間もない状態 若ガニは脱皮後まだ甲羅がやわらかく身入りもミソもまだ充分入っていない状態 半若ガニは身入りは良くなってきたがミソが今ひとつという状態 そして堅ガニは最高という具合です。カニの値打ち・価格はほとんどミソの入りで決めますので、姿が大きくても「安かろう」は出来るだけ避けたほうがいいと思います。

北海道産 VS ロシア産 美味しいのは?)

難しい選択です。実際の入荷量を比較すると北海道産が約60%/ロシア産が40%となっています。ただ生息する魚場を見ると北海道産の特に日本海物の方が沿岸の砂地で昆布やウニといった豊富な魚介類を餌に育っている為、身に甘みがあると思います。特に11月から4月にかけての道産日本海側物は良品が多いです。ただ価格がダイレクトに影響しますので、懐具合とご相談の上…。

仕込み)

食べ方としては、茹でる・蒸す この2つがベストだと思います。ただ、売っているカニには大きく活カニ等の生の毛ガニと、もうすでに一度茹でている冷凍の2種類がありますので分けて説明いたします。
まずは生「活毛ガニ」。買ってきてすぐなら、まず体を水洗いして、体が隠れる位の真水(水道水)に30分目安で漬けておきましょう。海水から真水に移すことで、筋肉が和らぎ調理後の出来上がりが良くなります。それでは調理方法に…。  
注)調理の基本…カニは仰向けにして調理する。

茹でガニ
鍋にカニが隠れるくらいの量のお湯をやや濃い目に塩を入れ沸騰させます。そこにカニを入れ再沸騰から約15分間目安で茹でて下さい。(カニを入れる際、脚もしくは全体を輪ゴム等で押さえておくと後で楽です。)ほんのり赤くなってきたら、火傷しないように取り出せばOKです。
蒸しガニ カニの腹部にある三角形の部分「ふんどし」と呼ばれるところを広げ、その間に塩を盛り上がるくらいまで入れ、沸騰させておいた蒸し器に、ふんどしが上を向いた状態で約15分間蒸す(小ぶりの場合は若干短めに)。塩分が全体にまわり、身が美味しく甲羅もきれいに仕上がります。蒸し器が無いときは、フタ付の鍋を用意し、鍋底にどんぶりを裏返しにしてどんぶりの3分の2位までお湯をそそぎ、一度沸騰させます。沸騰したらどんぶりに出来るだけ平らなお皿を置いてカニを乗せ、約15分蒸します。
ワンポイント)茹でる際に、鍋とふたの間にキッチンペーパーかふきんを挟めることを忘れないで下さい。水が垂れてカニが水っぽくなってしまいます。注意しましょう。(蒸す際の空茹でにはご注意を)
冷凍ボイルの場合
冷凍の場合は出来るだけ茹でずに蒸した方が美味しく出来上がると思いますので、蒸しカニのみのご紹介とさせていただきます。まずお湯(お風呂の温度が目安)に30分程度浸して解凍しておきましょう。その際の手順は活毛ガニと同じですが、もうすでに1度ボイルしてありますであまり蒸しすぎないように7~8分を上限にすればいいと思います。更に時間短縮したいという方には、ちょっとだけ多めに塩を入れた塩水を作り、解凍しながら蒸すという方法があります。これですと簡単に仕上がりのいい状態がつくれると思います。(水から中火で15分を目安にしてください。)※ ただ出来れば、甲殻類を調理する際は全解凍をお勧め致します。

さばき方・食べ方)

まな板・調理バサミと軍手か薄手のゴム手袋を用意しておきましょう。

近 縁)

毛ガニの似た仲間にクリガニがいます。クリガニは似てはいますがよく見るとわかります。
識別法) 甲羅の両側が横に張り出す感じで5角形の形をしているのがクリガニの特徴です。こちらは身を食べるというより出汁にして食べる方がおすすめです。そして鍋や汁物が出来上がったらミソを食らうって感じです。

是非ご家庭でも調理してみて下さい。